Scabies

疥癬(Scabies)とは?

疥癬はヒゼンダニ(疥癬虫)という寄生虫によって引き起こされる感染症です。ヒゼンダニはダニの一種で、体長0.2-0.4mm前後と非常に小さいため、肉眼で見ることはほぼできません。
感染すると、首から下の全身に激しいかゆみを伴うブツブツやしこり、線状の発疹が現れます。夜間にかゆみが強くなる傾向があります。通常、感染から約4週間の潜伏期のあと、発症しこれらの症状が現れます。
ヒゼンダニは皮膚の上で交尾し、メスは皮膚の角質層にトンネルを掘って10-25個の卵を産み付けます。これを「疥癬トンネル」と呼び、曲がりくねった線状のミミズ腫れ状の発疹になります。トンネルの内部には卵とフンがあり、トンネルの先端にはメスのヒゼンダニがいます。卵は3-7日で孵化すると、皮膚の上に出て2-3日で成虫になります。
疥癬の症状である激しいかゆみは、ヒゼンダニのフンや脱皮した殻に対するアレルギー反応です。
疥癬には、ヒゼンダニの寄生が数十匹以下の「通常疥癬」と、100万-200万匹ものヒゼンダニが寄生することで皮膚が硬くなる「角化型疥癬」があります。角化型疥癬は通常疥癬に比べてかゆみは少ないのですが、感染力が強いという特徴があります。

疥癬の感染経路と予防

疥癬は皮膚が直接触れ合うことで感染します。性行為は親密な皮膚の接触であるため、高い感染リスクを伴います。ほかにも衣類や寝具、タオルの共有、添い寝や雑魚寝で感染することもあります。
近年、介護の現場などで感染が認められることが多くなってきましたが、年齢や健康状態とは関係なく、疥癬にかかっている人の皮膚と直接接触すれば感染するリスクはあります。とくに角化型疥癬は感染力が高いので注意が必要です。
疥癬の人と接する場合は、接触の前後で手洗いをしっかり行い、長時間皮膚の接触を避けるようにします。同じベッド、別の布団であっても同じ部屋で就寝することはやめ、衣類、寝具、タオルの共有は避けます。
性交渉のパートナーが疥癬と診断された場合は、念のため皮膚科を受診しましょう。

疥癬の検査

疥癬に感染しているかどうかは、赤くブツブツした部分や疥癬トンネル部分の組織を採取し、顕微鏡でヒゼンダニの成虫や脱皮した殻、フンなどがないか確認します。
皮膚の表面や浅いところを明るく照らし、レンズで拡大して詳細に観察するダーモスコピー検査を行うと、疥癬トンネルの先端にいるメスのヒゼンダニを見つけることができます。
ただし、通常疥癬の場合は寄生しているヒゼンダニの数が少ないため、繰り返し検査を行うこともあります。

疥癬の治療法

疥癬の治療には寄生虫治療薬の塗り薬と内服薬を使用します。塗り薬は、症状の出ていない部分を含め全身に塗ることが大切です。かゆみが強い場合は、対症療法としてかゆみ止めの薬を使います。
また、衣服や寝具、タオルなどにいるヒゼンダニに対しては、専用の殺虫剤と洗濯で駆除します。
治療と駆除は同時に行わないと効果が得られません。
ヒゼンダニの成虫と卵をすべて駆除し、かゆみなどの症状がなくなれば完治ですが、疥癬の人と直接的な皮膚接触などがあればまた感染します。
治療せず放置した場合は悪化するのみで、自然に治ることは決してありません。