Crab louse

ケジラミ症(Crab louse)とは?

ケジラミ症は吸血性昆虫であるシラミの一種のケジラミが、主に陰毛に寄生することによって引き起こされる感染症です。陰毛以外にも、肛門周辺、わき毛、胸毛などの体毛のほか、頭髪やヒゲ、まゆ毛、まつ毛にまで寄生する可能性があります。
ケジラミの大きさは1mmくらいで、もともと体色は白色ですが、人の血を吸うと淡い褐色となるため、肉眼でも見つけることができます。
メスは交尾すると毛の根元近くに30-40個の卵を産み付けます。卵は7日前後で孵化し、13-17日程度で成虫になり、成虫になったメスは1-2日後から卵を産み始めます。
衛生環境のよい日本では少ない性感染症ですが、完全にいなくなったわけではないので油断は禁物です。
一般的には、感染から1-2か月の潜伏期のあと、激しいかゆみなどの症状が現れます。発疹などはありませんが、下着に黒っぽい点状のシミが付くことがあります。これはケジラミのフン(血糞)によるものです。

ケジラミ症の感染経路と予防

ケジラミ症は主に性行為で感染します。ケジラミが寄生した陰毛から感染することがほとんどで、コンドームの装着で防ぐことはできません。
性行為以外では、寝具やタオルなどを介して感染することもあります。
また、親から子どもなど日常的に接触が多いと感染するリスクがあります。これらの場合、感染部位は陰毛に限りません。
一緒に暮らす家族のうち誰か1人でも感染した場合は、家族全員が検査を受け、早期発見・早期治療に結びつけて感染拡大を防がなければなりません。そして検査で感染がわかった場合は、パートナー、一緒に暮らす家族が同時にきちんと治療することが求められます。誰か1人でもケジラミ症が感染したままでは、再びほかの人にも感染を広げてしまいます。完治するまでは性行為も控えます。
衣服や寝具、タオルの共用も、完治するまで避けます。使用後の衣類等は個別に洗濯するのが基本で、アイロンをしたり、ドライクリーニングなどの熱処理も感染防止になります。

ケジラミ症の検査

ケジラミ症に感染しているかどうかは、下着に付着したケジラミの血糞が重要な手がかりになります。陰部などに激しいかゆみを感じたら、医療機関で検査をしましょう。
ケジラミの寄生が疑われる場合は、拡大鏡を使い、毛の間にいる成虫や、毛の根元に産み付けられている卵の有無を調べます。
ケジラミが見つかったら、アタマジラミなど別の種類のシラミと鑑別するために顕微鏡で確認をします。卵が見つかればそれも採取して顕微鏡で確認します。
ケジラミ症に感染していた場合、性交渉のパートナーや同居する家族にうつしている可能性が高いので、それらの人にも検査を受けてもらうことが必要です。

ケジラミ症の治療法

ケジラミが寄生している部分の毛を剃ること(剃毛)が、最も確実で安価な治療法ですが、剃毛が不完全だと他の部位にケジラミが移動してしまうことがあります。
そこで、ピレスロイド系の駆虫剤が配合されたパウダーやシャンプーを使って駆除します。卵にはあまり効果がないため、卵が孵化するタイミングを見計らい、3-4日に1回の頻度で3-4回繰り返し行います。
完治したかどうかは、白い下着を2カ月間くらい使用して、ケジラミの血糞が見られないことを確認して判断します。拡大鏡で成虫や卵の有無を調べることもあります。完治していない場合は再治療が行われます。
完全に駆除しなければ再発し、また、駆除できてもケジラミが寄生している人と性行為をすれば再び感染します。