東京レインボープライド2021 イベント報告

2021 年 10 月 12 日

「声をあげる。世界を変える。Our Voices, Our Rights.」


LGBTQをはじめとするセクシャル・マイノリティの存在を社会に広め、「“性”と“生”の多様性」を祝福するイベント、「東京レインボープライド2021」が、2021年4月24日(土曜日)から5月5日(水曜日)まで開催されました。
10周年を迎えた今回のテーマは、「声をあげる。世界を変える。Our Voices, Our Rights.」です。

コロナ下で、集客イベントができないため、トークライブ「#おうちでプライド2021」を配信しました。ここでは女装パフォーマー・ライターのブルボンヌさんと、イベントを主催するNPO法人東京レインボープライドの共同代表・杉山文野さんと山田なつみさんが司会を務め、数多くのゲストが参加。その様子はYouTubeとTwitterで配信され、総視聴者数は約160万人で前回の45万人を大きく上回りました。

1日目の最初に登場したのは、日本文学研究者・早稲田大学特命教授のロバート・キャンベルさん。キャンベルさんは2017年に米・ニューヨーク州で同性パートナーと婚姻関係を結んでいます。日本では同性婚が認められていないため、同性パートナーは家族とみなされず、そこから生じるさまざまな問題がありました。不動産の契約、入院時の面会や治療に対する同意書へのサインが認められない、配偶者に対する職場の福利厚生が利用できないといった生活における不具合を解消するため、早期の法整備が必要だと強調しました。
「LGBTQに対する意識は、国民レベルでは分岐点を超えたと感じるが、政治が追い付いていない」という指摘は、まさにその通りでしょう。

次に、タレントのSHELLYさんは、性教育の重要性を訴えました。「自分のからだを知り、相手のからだを知ることが、他者を尊重する人権意識につながる。性教育はジェンダー教育であり、人と付き合うための“交際教育”でもある」と話し、2冊の絵本を紹介。
1冊目は、米副大統領に飼われているうさぎのマーロンくんが、素敵な彼氏と結婚したいと思ったのに、偉そうなカメムシに反対されてしまって――という、『にじいろのしあわせ』(マーロン・ブンド/ジル・トゥイス作、EGケラー絵、服部理佳訳、岩崎書店)。全米80万部超のベストセラーです。
もう1冊は、『王子と騎士』(ダニエル・ハーク作、スティーヴィー・ルイス絵、河村めぐみ訳、オークラ出版)。両親と花嫁探しの旅に出た王子ですが、心の奥で求めているのはもっと別の存在だったのです――。
どちらもLGBTQへの理解と個性の尊重の大切さが伝わってきます。

続いて、メディアアーティストで、筑波大学デジタルネイチャー開発研究センターセンター長・准教授、JST CREST xDiversityプロジェクト研究代表の落合陽一さんが登場し、「愛する者同士が結婚を望むのに、なぜ同性婚を反対するのか1ミリも理解できない」と発言。
また、「テクノロジーの活用がダイバーシティ(多様性)の実現につながる」と、科学技術の可能性を強調する一方で、「不便をテクノロジーで解決することは大切だが、手話などはすでに文化であり、なくす必要はない」など、多様性という豊かさが存在する社会の重要性を語りました。

フジテレビ報道局の阿部知代さんは、「アライ(Ally)※」として、東京レインボープライドにも関わってきた自分でも、ときどき「意識が至らなかった」と反省する場面があると話しました。この発言からも、多様性を互いに認め合うことは決して簡単ではないことがわかります。

※LGBTQではないが、LGBTQの活動を支持し、支援している人たちのこと。

この日の最後のゲストは、女優・モデルの水原希子さん。過去に出演した番組での発言が、LGBTQ差別だとの指摘に対して、知識のなさや無理解から発してしまったと過去の発言を率直に認め、いまはアライという意識をもって活動していることを明言。率直で強い意志を感じさせる言動に、司会の山田奈津美さんが涙ぐむほどでした。


2日目は、NPO法人東京レインボープライドの10代20代のメンバーによる「ユースプライドジャパン」が、タレントのりゅうちぇるさん、作家の乙武洋匡さんを迎えて、若い世代のLGBTQが抱く思いや悩みを語り合いました。 りゅうちぇるさんは、トランスジェンダーが寄せた「ほめられても自己肯定感がもてない」という悩みに対して、「他人の価値観を基準にしているからでは?」と話し、自分はこれでいいと思える価値観を自分のなかに育てていくことが大切という考えを、自身の経験を交えながら話しました。

LGBTQの悩みは、自分と周囲との間に壁を感じたときに生まれやすいようです。この日最初に登場した、お笑い芸人のせやろがいおじさん(リップサービス)が、「きっかけさえあればわかる人に、どう伝えるかを考える。それが気づく人を増やすことにつながる」と述べたように、当事者やアライが、「声をあげる」ことが、周囲の人の気づきにつながり、ユースたちが願う「マイノリティーが生きやすい日本への第一歩」になるに違いありません。
ゲストは他に、アンミカさん(モデル・タレント)、廣瀬俊朗さん(元ラグビー選手、株式会社HiRAKU代表取締役)、テリー伊藤さん(演出家)、夏木マリさん、長谷川ミラさん(モデル)、ミッツ・マングローブさん(歌手・タレント)、ミラクルひかるさん(タレント)、YOUさん(タレント)でした。

2日間、10時間に及ぶライブ配信では、それぞれの立場から率直な意見が語られました。それを視聴している人たちからもTwitterなどを通して感想が寄せられ、双方向性のイベントは多くの人の心に残るものになりました。


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メインビジュアルは、一般公募で選ばれた山田健さんの作品。
SDGsの17の目標を意識したデザインで、たくさんの「手」は連帯をあらわしている