What is Sexual Health? セクシャルヘルスとは

公開日:2022年6月28日

避妊に失敗したかも?と思ったら

緊急避妊薬「アフターピル」とは

アフターピルは、性交から72時間(3日)以内に服用することで望まない妊娠を防ぐことが期待できる薬剤です。「緊急避妊ピル」ともいわれています。
性交時にコンドームが破れたりはずれたりしたと避妊に失敗したおそれのあるときや、避妊しなかったとき、性被害に遭ってしまったときなど妊娠の可能性がある場合に、産婦人科・婦人科などの医療機関を受診して処方してもらうことができます。日本で処方可能なアフターピルには、「ノルレボ®︎錠1.5mg」と、ノルレボのジェネリックである「レボノルゲストレル錠」があります。性交から72時間以内に正しく飲めば、高い確率で避妊ができます。国内で行われた臨床試験1)で、性交後72時間以内に0.75mg製剤2錠(レボノルゲストレルとして1.5mg)を1回経口投与した結果(解析対象例63例)、妊娠阻止率は81.0%でした。

なぜ性交後の服用で避妊ができるの?

妊娠には女性ホルモンのはたらきが深くかかわっています。女性ホルモンは主にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があり、プロゲステロンは子宮内膜を受精卵(精子と結びついた卵子)が着床(受精卵が子宮内膜にくっつくこと)しやすいように整えるはたらきをもっています。
アフターピルに含まれているのは、このプロゲステロンです。
なぜ妊娠を助けるホルモンが避妊に役立つかというと、排卵直前にプロゲステロンが大量に体内に入ることによって、妊娠を促す黄体形成ホルモン(LH)の分泌が抑えられます。その結果、卵子と精子が出会うことはなくなる、つまり妊娠することはなくなるのです。

アフターピル 副作用は?

アフターピルの副作用としては、頭痛や眠気、めまい、吐き気、下腹部痛、下痢、不正出血、だるさ、むくみなどが起こることがあり、なかでも比較的頭痛や吐き気、不正出血が多いといわれています。こうした副作用が起こるのは、薬の影響でホルモンバランスが一時的に大きく変化するためだと考えられていますが、ほとんどの人は副作用がみられず、現れたとしてもその症状は1日、2日でなくなります。
アフターピルによって妊娠しにくくなったり、将来生まれる赤ちゃんに悪い影響があるのではないかと心配する人もいるようですが、そのようなことはありません。

アフターピルを服用しても妊娠することはある?

受精から着床にかかる時間は、約96~120時間だといわれていますが、アフターピルの避妊成功率は時間に比例するという報告があり、性交後できるだけ早くアフターピルを服用したほうが避妊成功率は高くなります。 日本で処方可能な2剤は、どちらも72時間以内に服用することが用法として、定められています。

アフターピルを服用後、妊娠しなかったときは生理がきますが、薬の影響でその周期が一時的にくずれることがあります。アフターピルを飲んだのが排卵前か、排卵期か、排卵後かによっても生理がくる時期は異なります。 性交後3週間程度経っても生理がない場合は、必ず妊娠検査薬で調べたり、病院を受診したりして妊娠しているのかどうかを確認してください。

アフターピルを服用した後に、避妊をしないで性交すれば妊娠する可能性はあります。妊娠を望まない場合は、効果の高い避妊法を選んできちんと避妊することが大切です。

アフターピルの入手方法は? 費用は?

アフターピルは、産婦人科・婦人科などの医療機関を受診して処方してもらいますが、すべての医療機関が対応しているわけではありません。厚生労働省のサイトには、「厚生労働省のウェブサイトに掲載を希望した緊急避妊にかかる対面診療が可能な産婦人科医療機関等の一覧」2)を都道府県ごとに分けて掲載しています。この一覧には、病院名、所在地、電話番号、病院のホームページのほかに、対面診療が可能な時間帯なども掲載されています。夜間や休日の場合は、病院検索サイトで休日診療を行っている産婦人科・婦人科、救急科などを調べて問い合わせてください。平日の診療時間内に受診する場合であっても、事前に電話などで確認しておくと安心です。

受診して事情を話し、問診等を行った後、処方されるアフターピルに対して重篤なアレルギーを発症するリスクがある人、重い肝障害や腎障害のある人など、安全上の不安要素がなければ処方してもらうことができます。通常は内診を受ける必要もありません。

アフターピルに健康保険の適用はないため、初診料や処方料、薬剤料などはすべて自己負担となり、おおよそ6,000円から2万円前後の費用がかかります。

また、性被害に遭った場合には、警察庁の性犯罪被害相談電話(全国共通#8103)に相談を。受診する医療機関へ支払う初診料や性感染症の検査費用、アフターピルなどの費用を負担する制度があります。内閣府の男女共同参画局のホームページでは全国の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」を紹介しています。このような専門機関を通してもさまざまな支援を受けることができます(全国共通#8891)。

現在、アフターピルを必要とする人が、迅速に入手できるようにするために、「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」という活動が行われています。2022年2月には厚生労働省に要望書を提出しています。
今後、アフターピルを適切に使用していくためにも、避妊に対する正しい知識は必要です。避妊に関してはパートナーとしっかり話し合い、効果の高い方法を選択しましょう。しかし、アフターピルを必要とする状況におかれた場合、過剰な負担を感じることなく、すぐに入手できる環境が整うことも望まれます。

1)レボノルゲストレル錠ノルレボ錠1.5mg添付文書
2)厚生労働省ホームページ 緊急避妊に係る取組について「緊急避妊に係る診療が可能な産婦人科医療機関等一覧」